シモン 杉本

またシモンとデュオをやります。何回目なんでしょうか?。
最近はカスタネットに凝っていて(15年くらい前にカスタネットの曲をつくったことがあったので、家に家に沢山あるのです)、それを使った曲をやるかもしれません。いや、やります。
2年半ほど前、シモンは私を国立能楽堂に誘ってくれました。私はそれまで能楽を生で観たことがなく、しかもその最初の曲は「道成寺」という特殊な演目だったこともあり、とても大きな刺激を受けました。能を観るのは決して安くないのに、私はこれまでに8回ほど能楽堂に行ってます(その内5回はシモンと一緒でした)。また神社でも2回ばかり無料の能を体験しました。観れば観るほど面白くなってきたのです。もし今お金があれば、そしてそれで何かを観ようというのであれば、真っ先に行きたいのは能楽堂であるといっても過言ではありません。
能の諸要素の中で特に私を惹きつけたのは、囃子、とりわけ大鼓と小鼓のコンビネーションです。最初は特に大鼓が好きでした。この楽器の音色と間合いには私が音楽に求める大切な何かがあるような気がしたのです。私は大鼓を習おうかと考えました。しかし、それはやめることにしました。もとよりそんなお金はありません。もしお金があれば私はそうしたかもない。しかし、なくて良かったと思っています。それはやはり私がやることではないからです。
私はカスタネットが大量に家にあることを思い出しました。そして、それを鳴らしてみたところ、それぞれの楽器に固有のピッチがあることを知りました。これを利用することによって、打楽器のメロディアスな側面が引き出せるんではないか?しかもこれは小鼓の持つ役割に近いところもある。私は興奮しました。カスタネットはーーまあだいぶチープですがーー大鼓的な音色を持ちながら、それを複数使うことによって小鼓的な効果をもたらすことが可能であるということが分かったのですから。しかも、あまり重要視されない、チープな楽器を使ってですよ。
韓国のソウルでワークショップをやった時にホン・チュルキにこんなことを言われました。「こういう事は誰でも出来る。だが、いざやろうとなると難しい」。嬉しかったですね。それこそ私のやりたいこと(のひとつ)だから。誰もが出来ないようなことをやっても、音楽としては面白くも深くもない、ということがままあります。音楽は演奏技術の発表会ではないからです。しかし、私は真に技術を持っていなければ到達できない音楽があり、それを尊重することも大切だと思ってます。問題は、その音楽が豊かであるかどうか、それがまず問われるべきことなのではないでしょうか?





2015年2月1日(日)
杉本拓
Simon Roy Christiansen
7時30分開場/8時開演
1500円 +ドリンク
大崎l-e
http://www.l-e-osaki.org/?p=3437