core of bells

core of bells + 杉本拓の”gesupiria 2”がリリースされました。今年はcore of bellsのメンバー達と沢山会っていたように思う。core of bells + 杉本拓のライブが何回かあったし、レコーディングもした。そのための練習、打合せ、マスタリング作業があり、彼らのライブにも行ったし、彼らも私のライブに来てくれた。山形君とは室内楽コンサートシリーズで、池田君とはさりとてで、一緒にライブも何回かしている。それに、ずいぶんと一緒に飲みましたね。こういう日々が続くと、何かcore of bells中毒のような状態になってきて、十日も彼らに会わずにいると少しさびしい感じがするようになってしまつた。いやー、本当に味わい深い若者達ですよ、彼らは!あるライブの後で宇波くんが「役者がそろっているなぁ〜」ともらしていたが、まさにその通り。こんな面子はそうそう集まるもんじゃない。---とここで各メンバーについて書こうと思ったが—そして実際に少し書いてみたが—、へたなことを書くと怒られそうなので、やめることにした。具体的に彼らがどんな音楽をやっているかも書かない。それを書いても何も説明したことにならないから。ライブを体験するなり、CDを聴いてもらうしかない。
宇波君から面白いバンドだとは聞いていたが、実際に初めてライブを見たのは去年の暮れだった。これが本当に感動的なライブだった。実際に、本当に私は感動した。もしも誰かに「何故core of bellsとユニットを組んだのか?」と尋ねられたら、「感動したからです(Because I was moved!)」と答える以外にない。こういうやり方があったのか〜!これは考えたことがなかった、と心の中で叫びました。というか、多分、彼らにとっては「こういうやり方」(それはもちろんひとつしかないという意味ではないですよ)しか選択の余地がなかったのかもしれない。しかし、それを探知できたというのは、彼らに才能と運と器量があったからである。そういう意味で、私はcore of bellsのことを、ひとつの時代の、ある文化の中に必然的に出現した、プロトタイプ的なバンドだと思っている。真にオリジナルな存在とはそういうものではないだろうか。同じ様な試みは追々増えるだろう。いや、そうでもないか。あのとぼけた味を出すには努力と才能だけでは出来ないだろう。このもやもやした文化状況からやるべきことをつかみとる感受性がなければならない。彼らはひとつの「個性的」なバンドなどではないのである。
この前に観た彼らのライブは、何と言うか、一種の寸劇だった。もちろん音楽もきちんとあった(ここが彼ら凄いところである)。しかし、その音楽的流れを断ち切るように吉田君が「場面変わって、ここは瀬木の精神世界」と言った瞬間がライブのハイライトで、私は大笑いした。観てない人には何のことか分からないでしょう。でも、観ていた私にも分からなかったんです。寸劇のストーリーも台詞の意味も分かるんだけど、何がおかしいのかはよく分からない。
core of bellsの展開する世界は子供の頃に観た『カリキュラ・マシーン』を思い出させる。子供は訳の分からないものに喜ぶ。しかし、その子供達を喜ばせているのは大人の知性なのである。だが与えられたものをそのまま単純に受け入れているわけでもない。私は子供の頃に『人生ゲーム』とか『モノポリー』なんかのボードゲームで遊んだが、ルールは勝手に改変し、しまいにはまったくのオリジナルなゲームになってしまったものもあった。ならば最初から作れば良い、ということになって、随分と色んなゲームを作った記憶がある。実はちょっと前も、ある飲み屋で新種のカードゲームをみんなで考案して、これが実に面白くて、一時は毎日のようにやっていたものである(もちろん小博打としてだが)。
core of bellsにはそういうところがある。えっ、何のことか?つまり、子供を楽しませる大人の知性とそれを受け取り改変させる子供のアイデアとの同居、あるいはフィードバック回路が、そこに見て取れるのである。
——なんて事を書いてみたが、まったくなんの説明にもなってないな。彼らの音楽について何か書くのは難しい。けれども、それについて何かを書こうと思うときに、様々な考えが浮かんでくるのもまた事実である。それだけ開かれている音楽なのである。批評家の先生方には是非core of bellsについて書くことをチャレンジしてもらいたい。意図や目的のない音楽—にもかかわらず積極的に意味を生んでしまう音楽について—、果たしてどのような言葉が生まれてくるのか?ここで「音楽性」云々を言う事は無効である。「音楽そのもののオリジナリティー」、これをまず疑わなければならない。では、その後になにが書けるのか?

というわけで”gesupiria 2”よろしくです!
http://coreofbells.com/?p=349

発売記念ライブもあります。
http://coreofbells.com/?p=279