ちょっと一言

「安くなったよね〜!!」
近所の中古盤屋でたまたま遭遇した25年来の知人が放った言葉である。本当に安くなった。まるで切手のようだ。だが安いからといって、おいそれとは買えない。買い取り価格はそれ以上に安くなっているから。
ちょっと聴きたいな〜というCDなりレコードなりがあったとして、それが500円で売っていたとしても、どうせ買い取りは50円だろうから、一時の享楽のために貴重なマネーを使ってよいものか、って思い悩んでしまう。昔だったら、いつか売れば多少の金は帰ってくる、という目論みのもとで買っていたが、それが今は難しい。
月末になるとよく、スーツケースにCDとかレコードを入れて中古盤屋に売りに行って、またそこで知り合いのミュージシャンがスーツケースを転がしている、そんな光景をしょっちゅう目撃したが、それも今となってはなつかしい。
もう中古盤屋に売りにいくことは少なくなったし。売るものがないから。というのは、全然音盤を買ってないからだ。
CDは本当に買わなくなった。去年は新譜と中古あわせて5枚とかそれくらいしか買ってないんではないだろうか。では、何を聴いているかというと、図書館で借りる“イーグルス”とか“グランド・ファンク”とか。まあ、そればっかりも飽きるんで、次第に何も聴かなくなる。
CDがなくなる云々というのは実は(最下層の)生態系の問題でもある。中古屋も瀕死の状態だろうから安く売る。けれども安く買いたたかれるのはいやだからこちらは買わない。もっとも、それ以前にCDは新品だろうが中古だろうが売れないから、値はますます下がる。そんでもって、中古屋の最後は携帯屋か駐車場。売るところがなくなれば、ますますCDなんて買わんでしょう。
よく知らないけど、配信の音源て売れないんでしょ?新品も中古もないだろうからね。
売り手の立場からすると、数十人か、せいぜい百人くらいがCDを(別にほかの何のメディアでもいいが)買ってくれればいいんだけど、それも難しい。今、音楽はただになりつつあるからね〜(本当はそうじゃないけど)。
前から言ってますが、多様化なんてウソッパチです。水平化が進んでいるだけで、縦の生態系が無視されている。残飯をあさっているほうが楽である、という立場があってもいいじゃないの。