さりとて、即興と作曲、マンフレッド

佳村萠さんとの『さりとて』が今年の5月にスイスで演奏される。主催はヴァンデルヴァイザー・グループのJuerg Frey。それで譜面をずっと書いていた(その作業で自身の老眼の進行を知った)。一応歌とギターの譜面はあるが、ふたりでずっと演奏しているうちに少しづつ変化したし(CDも譜面と違う)、スイスでやるときの伴奏はチェンバロとチェロなので、思い切ってスイス用に新しいのを作った。
問題は歌詞で、日本語で歌ってもらうのはどうかと思ったので、英語ヴァージョンを作ってみた。日本語だとだいたい一文字一音ですが、英語だとそうはいかないので、うまくいかない時は少し言葉を変えたりして、なんとかでっちあげた。作詞家(萠さん)にもチェックしてもらいましたが、どうかなぁ。
いきたいがスイスまでいく旅費はなし。

最近は、曲を送ってほしいとか、作曲してほしいとかの話がよく来て、もちろん喜んで引き受けるが、経済的な観点で考えるとどうなんだろうか。演奏家としての仕事であれば、現地まで行かなければならないわけだから、当然多少の収入は見込める。しかし作曲の場合は譜面を送るだけなので、それによる入金は望めない。しかし、私も色んなところから譜面を送ってもらっているので文句は言えない。おたがいさまなわけだ。
即興だろうが作曲だろうが、音楽が問題なのであって、やり方はどちらでもいい。別に”作曲家”になりたいわけでも”即興演奏家”になりたいわけでもない。それでも即興の世界というのは、私自身がかつて属していたものも含め、どうもしっくりこない。もちろん素晴らしい演奏家もいて、そこから良い音楽が生まれることも多い。それは認めないわけにはいかない。しかしそれだけとも言える。私にとって”良い演奏”とか”良い音楽”というのはさほど重要ではない。何かもっとわくわくしたいのである。即興というのはひとつのやり方であって、それがうまくいけば書かれた音楽では到達しにくいような地点が開けるはずである。ところが長年即興をやったり聴いたりするなかで、そういう可能性を感じたものは極めて少なかった。それは、多くの即興演奏が演奏者それぞれの資質に委ねられているからではないだろうか。そしてその資質も演奏家が属する即興のマナーに守られ、またそこで育まれたものである。まず即興の種類があり、それがどんなものか分かった上で、演奏者の個性が生きてくるのである。違うだろうか?だから、実際に演奏するまでどうなるか分からない即興、なんてものは滅多にお目にかかれない。もちろん、これは良い悪いとは別の話である。しかし、そういう即興では、各演奏者は結局のところ自分の役割(個性)に忠実にならざるをえない。そこから外れた行為をすることは演奏者の存在価値を傷つけてしまうから。ある決まりの中でそれから外れたことをしても、その決まりあっての外れた行為なわけだから、その決まりを強固に浮かび上がらせて終わりである。試す価値もあまりない。
そもそも即興とは音楽を作るためのツールであったと思うんだが、ほとんどの即興は確立した音楽があった上での不確定要素としてしか機能していない。ブルースやジャズのジャム・セッションとほとんど変わらない。音楽の種類が違うだけである。そして即興にも幾つかの種類があると。しかし、それぞれの即興の種類の違いを”作曲”されたものとして扱うのは間違っていると思う。作曲と即興はやり方の違いであって、結果的に、即興が作曲されたもののように聴こえようが、反対に作曲されたものが即興のように聴こえようが、そんなことはどうでもよいと思う。重要なのはそこではない。
と偉そうなことを書いたところで宣伝。


Manfred Werder / Stefan Thut 3 days at Kid Ailack Art Hall
13-15 February 2009

2月13日(金) Works by 杉本拓、大蔵雅彦宇波拓
曲目未定
出演:Manfred Werder、Stefan Thut、杉本拓、大蔵雅彦宇波拓

2月14日(土) Works by Stefan Thut
guit, guit, 1-11 (2007)
杉本拓guitar, 宇波拓guitar
vier funf (2008)
Manfred Werder mouth organ, Stefan Thut cell, 杉本拓guitar,
大蔵雅彦alt sax, 宇波拓guitar
some, 1-4 (2009)
Manfred Werder、Stefan Thut、杉本拓、宇波拓

2月15日(日) Works by Manfred Werder
3 perfomers (2000-)
Stefan Thut zither, 杉本拓 guitar, 宇波拓 guitar
2008(1)
Manfred Werder、Stefan Thut、杉本拓、宇波拓

各日
open19:00/start19:30 予約2700円当日3000円 3日通し券7500円
於:明大前Kid Ailack Art Hall
お問い合わせ、ご予約:
キッドアイラックホール TEL:03-3322-5564 http://www.kidailack.co.jp/
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