sekundenklänge (some sounds, just seconds)

"sekundenklänge"はAntoine Beuger(アントワン・ボイガー)による、ギターやハープ等の弦楽器、ピアノ、マリンバ等の音が減衰する楽器のための作曲作品。全50ページだが、好きな順番でやってよいし、演奏するページ数も自由。私はこれまで4回ほど人前でこの曲をやっているが、律儀に最初のページから順番にやって、2週目の5〜6ページまできた。要した時間は4〜5時間というところだろうか。各ページは三段の五線譜で、一番上が5音、真ん中が7音、一番下が5音。五七五なので、これは俳句ですね、とアントワンに言ったら、どうやらほんとうにそこから拝借したらしい。尾のない黒丸と、格段にひとつだけ白丸が入っている。どういうことかというと、黒丸は早く減衰する音で白丸は(比較的)ゆっくり減衰する音。問題は、というかここがおもしろいところなのだが、一度音をはなったら、あとはその音を操作できない。ミュート等で人為的に音を早く減衰させてはいけないのである。すなわち、早く減衰する音と長めにとどまる音を楽器の特色を考慮して選ばなければならない。あらかじめどのポジションを使って音をだすかを譜面に書いておくという手もあるが、そうでなければ考えて演奏しなければならない。どこのオクターブでもいいので、高めのピッチを早く減衰する音にあてたりするのもひとつのやり方である。ギターだと、高いフレットで弾くと早めに減衰するので、最初の頃はその手を使ってオクターブも譜面どおりのものを弾いていた(CDに入っている演奏もほぼ同じアプローチでおこなわれた)。例えば6弦の20フレットと2弦の1フレットは同じC音だが、音のとどまる時間が2弦の1フレットのほうがずっと長い。しかし、最近はこのやり方だけにたよるのをやめて、大半の音をハーモ二クスを使ってやるようにしている。何弦を使うかにもよるが、第四倍音くらいまでは比較的ゆっくり減衰し、反対に、一弦とか二弦の第六倍音から上の倍音はあっというまに減衰する。音を選ぶ際にそういった楽器の構造上の特徴にかなり依存しなければならない、というのが面白いんですよ。くわえて、高音弦の倍音は、特に第6倍音より上の倍音は綺麗に出すのが難しい。でも、そういうところも含めて、この曲を演奏するのはとても面白い。はっきり言って、自分の曲を演奏するより楽しい。どこか気楽な感じのする曲なのである。


2009年9月9日(水) 10日(木)
19:30開場 20:00開演
2000yen + drink order
Sekundenklänge (some sounds, just seconds)
作曲:Antoine Beuger(アントワン・ボイガー)
演奏:杉本拓

このアントワンの曲はとても気にいってよく演奏しています。 どのページをどんな組み合わせでどれだけやるかは演奏者にまかされているのですが、今回は2日間で全ページ(50ページ)を演奏しようと決めました。