溝口健二の『山椒大夫』と『雨月物語』をDVDで観た。どうも溝口映画はオーセンティックで苦手だったんですが、私も歳をとったせいか、素直に受け入れることができるようになった。しかし、まあ、美しいですね。こういう映画はもう望めないでしょうね。技術的にどうのこうのとか、予算が組めないとか、そういうこともあるでしょうが、こういうものを我々の文化がもう必要としていないのではないか、そんなことを考えてしまう。こういう映画を作ったところで--多分作れないでしょうが--それに対峙する心構えを我々はもう持っていないのではないか。私にしても、ひとつの古典、美的鑑賞物としてしか接することができない。これらの映画は当時も美的なものとして作られたのだろうか?そういう側面もあったろうと思う。ただ「美」とか「撮影技術」とか「演出法」とかは映画の作り方において、今のように分けられていなかったのではないか。全てが暗中模索で確立していたものは少なかったはずだ。(特に)『雨月物語』はタルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』を思い出させたが、影響が様々なレベルで関係しあい、長い年月をかけて映画の語法を作り上げていった。私は後から来た者なので、溝口の映画が古典的名作に思えるだけであって、当時は「一体コレは何だ!」と思われていたかもしれない。もちろん娯楽的要素も多分にあるが、しかし、現在の我々にはインスタントでより快楽的な娯楽があふれているので、かつての娯楽的要素がそうとは思えなかったりする。畢竟するに、DVDで溝口の作品を観る、ということが現代の娯楽目録のひとつなわけだが。しかし、それを言うとどうしようもなくなる。しかし、名匠の作品に接する、そういうことがもう少ないでしょう。そういう文化的下地が消えうせた。みんな好き勝手やって万々歳かもしれないが、こういう私が今書いているブログだって要はあてがわれたものであり、早い話がアプリケーション・フォームを埋めてるだけかもしれない(これもどうしようもないことだが)。
ついでに告知。
明日(11月11日)の「水曜のハイツ」は休みです。その後はしばらく休みはないかな。
それと↓。このライブは撮影することになっていて(袴田竜太郎さんに頼みました)、ひょっとしたらDVDになるかも。
天狗と狐 ふたつのコンサート
2009年11月24日(火)
天狗と狐オーケストラ(杉本拓、宇波拓、中尾勘二)
19:30開場 20:00開演
2000yen + drink order
2009年11月27日(金)
天狗と狐(杉本拓、宇波拓)
19:30開場 20:00開演
2000yen + drink order
千駄ヶ谷ループライン
http://loop-line.jp/