パンダコパンダ

昨日の続きは書かないで別の話。
良いという評判を聞いていながら今まで観ずに過ごしてきた『パンダコパンダ』をついに観た。これ本当に素晴らしい作品じゃないですか。特に『雨ふりサーカス』が気に入った(2回観てしまいましたよ)。話はたいした事はないんだけど、見せ方がいい!小憎らしいほどの巧みな演出。ストーリーを面白おかしくするとか、登場人物の内面を描くとか、そういう小賢しいことをせずに、表層とスタイルだけにこだわっているのが実にすがすがしい。72年かぁ〜。その頃のアニメというのはむさ苦しい物だらけだったよう気がする。こんなしゃれたものがあったとは。子供の頃に観ていたら、きっと心に焼きついたはずだ。いや、今でもまだ間に合うかもしれない。サーカスの動物を乗せた機関車が平然と水の中を走ったり、またそのまま丘を上がったりするシーンがあるんだけど、ここで何故か目頭が熱くなった。押し付けがましい「感動」とか「盛り上がり」は一切なく、ただ機関車が走っている。いいじゃないですか。だいたい昨今のものは、説明しすぎだったり、書き込みすぎなんだよね。こういう簡素な演出の方が実は深いものが表現できると思う(私はブレッソンの『スリ』が頭にうかんだ)。子供の抽象能力をなめてはいけませんよ。アニメの画面に出てくる、家とか庭と駅とか電車とか、そういうものは自分の回りにある実在のそれらに投影するもんでしょう。私はそうでした。身近にあるものを本来の用途とは無関係の別の何かに見立てて遊んだりとか。リアリであることなんてどうでもよかった気がする。おもちゃもリアルでないほうが抽象能力を伸ばすことができるんじゃないだろうか。こういう見方は大人のものである。しかし、子供向けの作品というのも(当たり前なんだが)大人が作っているわけで、色々と考えなければならない。『パンダコパンダ』は奥深いものがあります。